人前で緊張する心と体のメカニズムを理解し、あがり症を克服

緊張の体のメカニズムを知る

東京話し方教室 講師の三原です。今回のコラムでは「人前で緊張する心と体のメカニズムを理解し、あがり症を克服」についてご紹介いたします。

「人の防衛本能について」

人前で話をしようとすると、動悸や口の渇き、冷や汗、めまい、体や手足の震えといった症状が出てきます。

慣れない物事などに直面して心が張りつめてしまうと、私たちはみな等しく誰でも緊張してしまいます。

ただ、あがる人と、そんなにあがらない人というように、人によって差が出てきます。

緊張すると体が硬くなる、呼吸が速くなる、血流が早くなるなどの体の反応は、人間が生まれながらに持っている防衛本能というものです。

人は危険な動物に襲われそうになると、命の危険を察知し、戦う・逃走するという行動の準備をします。

これは、人が危険から身を守るために本能的に備わっている反応です。戦う・逃走するために、筋肉が硬くなり、呼吸と血流が早くなるのです。

防衛本能とは、大事なときに自分を守り生き延びるための体と心の知恵です。

このように緊張するのは、人の防衛本能が機能している証拠であり、この防衛本能をコントロールしているのが自律神経と言われるものです。

「防衛本能をコントロールしている自律神経とは」

自律神経とは交感神経と副交感神経の2つからなり、私たちの意思とは関係なく働いています。

私たちがひどい緊張感や不安におそわれた時、交感神経が刺激されて覚醒や興奮に関係している神経伝達物質が盛んに分泌されます。

その結果、心拍数が急上昇し、動悸や発汗、震えなどが起こります。

このように交感神経が興奮すると集中力が高まり、身体能力を上げることに繋がっていきます。そのため、スポーツやプレゼンなどで良い成果を出そうとすると、ある程度の緊張が必要になってくるのです。

「あがり症につながる自律神経の乱れ」

ところが、交感神経が過度に興奮し、神経伝達物質が過剰に分泌されてしまうと自律神経のバランスが崩れてしまいます。

そうすると、体の震えが止まらなくなり、どもりや赤面症、多汗症といった反応が出てきてしまいます。

それが、ひどいあがりの症状につながっていきます。

私たちがあがりの症状を克服するために、腹式呼吸をする、冷たいタオルで首を冷やす、あがり症に効くツボを押すなどの行為は、乱れた自律神経を正常に戻すための改善方法なのです。

このように、自律神経は私たちの意思とは無関係に働いているので、あがらないことに意識を集中しても無駄になってしまいます。

あがらないことだけに意識が集中すると、逆にあがりの症状が激しくなってしまいます。

ちょっとした小さなミスが、大きなあがりを呼び込み、どんどんあがってしまうという悪循環に陥ってしまいます。

緊張の心の問題を克服する

「あがり症の人の特徴」

人前であがってしまって、それをほぐそうと躍起になればなるほど、かえってあがってしまう、これはあがりやすい人の特徴です。

また、あがりの症状というのは一度あがってしまうと、意識すればするほどあがりの度合いがどんどん激しくなる特徴があります。

そこで、緊張の心の問題を克服する第1歩は、緊張をそのまま受け入れあるがままに振る舞うことです。緊張していることをしっかりと自覚し、今の自分の状態を自然に受け入れることが大事になります。

「あがりの心を克服するコツ」

あがりやすい人の多くは、他人の目を気にしてあがっていることを隠そうとします。

顔が赤くなったら恥ずかしいと必死に隠そうとして、かえって意識してしまい余計に体が硬くなり緊張してしまいます。

このことを心のケアの領域では精神交互作用と呼ばれ、注意と感情の悪循環と捉えられています。

このようなときは、人の意思で自律神経をコントロールするのは無理なので、人前で緊張するのは当たり前と考えるようにします。

体が震えて顔が赤くなるのは自然のことだからと、あるがままに受け入れることが心の問題を解決するコツです。

また、あがりの症状は外から見えにくいという特徴があります。

手足の震えやのどの渇き、発汗などのあがりの症状は、周りの多くの人たちはほとんど気づいていません。

広い会場の人前で話しをしている場合など、聴衆からあがりの症状はまったく見えなくなります。

周りの人からはほとんど見えないことを意識せず、話の内容をシンプルにすることや堂々と振る舞うことなど、別の部分に意識を振り向けるようにすることです。それがあがりの心を克服する2つ目のコツになります。

3つ目のコツは、あがりを引き起こす原因を1つずつ解決していくことです。

一般的にあがりは、これまでの失敗体験やプレッシャー、準備不足、経験不足、評価されたい気持ちなどが原因となって体に変化が現れます。

これら一つ一つの原因は数多く実践的なトレーニングを積むことで克服していくことができます。

人前で話す経験が少ない人ほど、実践経験は効果を発揮します。

経験は学問にまさる

あらたまって本を読んだり人から教えてもらうより、実際に経験を積んだり練習を重ねたりして、体で覚えていく方がしっかり身に付くということがあります。

あがり症の克服もまさに習うより慣れろです。

しかし、ただやみくもに練習しても効果は期待できないので、やはりプロの専門家から適切なアドバイスを受けながら経験を積んでいくことが大切です。

全国各地に話し方教室はありますが、その中でもあがり症対策に特化している教室に絞って探すことも大切です。

先ほども触れましたが、緊張する原因にはプレッシャーや準備不足、経験不足があります。

話し方教室に通うことで、専門家からあがり症を改善する方法を教えてもらい、その方法を実践することができます。

同じ悩みを持つ受講者とともに、話し方の専門家のいる中で、時間の許す限り話し方の練習をして、人前という場所に慣れる経験が積めます。

また、同じ教室の受講者の話を聞くことで新たな気づきもあり、得るものもあるでしょう。

人前であがらないで話せるようになりたいという思いは、よりよく生きたいという成長への意欲とも考えられます。

そうした意欲を大切にして、今よりももっと経験を積んで、あがり症を克服をめざしましょう。

 

筆者情報:東京話し方教室 講師・三原

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